社会は少し先のことも予測が難しいほどに複雑です。それは物理的・物質的な世界では予測がしやすいことと対照的です。社会の複雑さは、我々個々人がみんな異なることや、我々の間の関係性も異なることに原因があります。
社会は予測困難ですが、もし予測が立つようになればたくさんよいことがあります。たとえばパンデミックが起きたとき、社会にどのような施策を施すことが感染拡大と経済的損失の防止を両立させるのか。都市交通において、人をどのように運ぶことがよりグリーンであり渋滞を緩和するのか、企業の間のサプライチェーンがどのような構造になっていれば災害時にレジリエントになるのか等、よりよい社会の実現に向け、取り組むべき課題は無数にあります。
私たちの研究室では、モデルや法則が立てにくく予測困難であるこの”社会”に対して、ネットワーク科学やシミュレーションを駆使し、実際の観測データを用いながら、さまざまな社会的現象の理解・予測に取り組んでいます。
文部科学省 科学技術・学術政策研究所から2021年に「ナイスステップな研究者」として表彰された際の講演の様子が下記の動画になります。この賞は毎年10人程度のみが選定され、のちのノーベル賞受賞者が過去に複数選定されており、非常に名誉のある賞です。この講演の中でこれまでどのような経緯で研究を行ってきたか、またこれまでの研究のうち、経済、特にサプライチェーンに関する内容を解説しています。
本研究室は社会シミュレーションを取り扱うことが一つの特長ですが、社会シミュレーションに関する授業のイントロダクションの下記動画でその雰囲気を知っていただくことができます。(2020年4月に行った授業です。)
本研究室が扱っている分野は多岐にわたりますが、代表的なものとして、サプライチェーン・交通・イノベーション・SNSの研究などがあります。
世界を驚かせるような大発見は、ともすれば一人の天才等に焦点が当てられがちですが、実際にはほとんどの発見やそれに伴う変革(イノベーション)はチームが生み出した成果です。本研究では、どのようなチームがより大きな発見を生み出す可能性があるのかを明らかにし、企業の戦略や国家のイノベーションシステム構築に資することを目的としています。
経済的競争は世界的な規模となり、企業は変化へのさらなる対応力を求められていると言えます。結果として企業はより身軽になろうとし、他の企業との取引や協力関係により競争力を確保しています。このような相互に依存している状況では、倒産や災害といった環境の変化が大きな波及効果を生み出し、結果を予測しづらいといえます。本研究では、そういった変化の波及はどのように起きるのかを明らかにし、企業の戦略や政策の立案に資することを目的としています。
人が活動する社会はいずれも複雑な振る舞いを示しますが,上記のイノベーションや経済活動だけでなく,SNSから観察できる人の言論等の様子のような大規模なものから,スポーツのように小規模なものまで,本研究室ではデータが入手可能なものは幅広く扱っています.そのようなデータに対して,ネットワーク科学や機械学習を適用し,社会に潜む構造や繰り返し現れるパターンを明らかにし、その社会のより深い理解に資するよう研究を進めています.
本研究室では、隣接するスーパーコンピュータ「富岳」の利用や、そのために必要な理化学研究所との共同研究をはじめ、数多くの大学・研究機関との共同研究を進めています。この理由は社会シミュレーションという非常に大きな学問においては、さまざまな専門家の知見・技術を必要とされることと対応しています。そのため本研究室では、日本のみならず世界中の共同研究先にいる、たくさんの優秀な研究者と接する機会があります。したがって、知的な冒険心のある学生の方がきっと満足できる場所になると思います。入学を希望される方の問い合わせをお待ちしています。
情報科学研究科は2021年度より開設されました。入試その他の情報については、研究科ホームページを参照ください。